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幸せのありかを探して 第17回

  • 5月25日
  • 読了時間: 4分

ブータン王国の仏教に触れる旅 その1

川口真子


 今回、ブータン王国国内を旅する時間が取れたので、文化的にも、宗教的にも非常に重要な地域であるブムタン県に注目したい。ブムタン県はブータン王国の中央から東に位置した高地に広がっている。古くから、東西を結ぶ交易路にもなっており、東ブータンの中心地として機能してきた。


 宗教面では、ブータン仏教の中核地と考えられている。7世紀にチベットのソンツェン・ガンポが土地の悪霊を鎮め、仏教の教えを広めるため、ヒマラヤ諸国に108の寺院を建てたと言われている。そのうちの1つがここブムタン県にあるジャンベ・ラカンであり、ブータン王国でも最古のお寺の1つである。


(敷地の四隅にある4色の仏塔と入り口の石の仏塔は、5つの智慧、5人の如来を表している)


 ジャンべ・ラカン建立後、悪霊がなかなか静まらないため、チベットから高僧グル・リンポチェが訪れ、修行、瞑想を行いながら、ジャンべ・ラカンの周囲を浄化し、仏教の力をさらに定着させたと伝えられている。寺の中には、グル・リンポチェの足跡を示す仏画や仏像が残っていると伝えられており、当時グル・リンポチェが行っていたとされる悪霊を追い払うための儀式や火祭りの伝統なども受け継がれている。


 現在、このジャンべ・ラカンの敷地内には、7世紀に建てられた本堂の他に、グル・リンポチェを祀るお堂と、ブータン王国初代国王が紛争に勝利したことを記念するためのお堂も建立されている。


 ジャンべ・ラカンと並んで、ブムタン県内で重要と言われているのが、クジェ・ラカンである。


(お寺のまわりには108の小さい仏塔(悟りの仏塔と呼ばれる)が建立されている)


 クジェ・ラカンも8世紀ごろにチベットの高僧グル・リンポチェが建立した寺であり、グル・リンポチェの八変化像や瞑想した地とされる岩穴が残されている。

(敷地内には4つの寺院と1つの大きな仏塔、祈祷旗などが並んでいる)


 この2つの寺院は、観光客だけでなく、地元の人々の祈りの拠点となっている。

ブムタン県内には上記の寺院他にもブータン仏教において[1] 重要な寺院が点在しているが、それらの紹介はまた次の機会にするとして、県内にはもう1つ大切な場所がある。


 それが、メンバルツォと呼ばれる湖である。実際に足を運んでみると、「湖」と言うよりは「渓谷」のような光景であるが、ここには非常に興味深い伝説があるので、ぜひ紹介させてほしい。




 メンバルは「燃える」、ツォは「湖」という意味なのだが、その名前の由来となる伝説だ。8世紀にブムタン県へ来たグル・リンポチェは経典などの仏教の宝物を各地に隠したそうなのだが、この湖もそのうちの1か所だった。


 ある日、ブムタン県出身の高僧、ぺマ・リンパがグル・リンポチェの夢を見た。その夢の中で、グル・リンポチェが宝物の1つがメンバル・ツォの中にあると話し、それを人々の前で見つけ出してほしいと伝えた。ぺマ・リンパはすぐに人々を呼び集め、この湖に飛び込んで探し始めたそうだ。10分近く泳いだ後、経典を見つけ出すことができたのだが、水中で探しているときに1本のロウソクを使ったと言われている。水中でもその火が消えなかったことから、ぺマ・リンパは「神の使い」とされ、この湖の名前も「燃える湖」と言う意味のメンバル・ツォとつけられた、と言われている。


 ブータン王国において、もっとも重要と言われている人物は下記の3人である。

・仏教の開祖である、釈迦

・チベットの高僧で、17世紀に宗教的権威と政治力をもたらし、ブータン王国を統一に導いた、シャブドゥン・ンガワン・ナムゲル

・蓮から生まれ、修行した後、チベットやブータン王国に仏教を伝えた高僧、グル・リンポチェ


 しかし、東部ブータンのブムタン県では、地元出身の高僧ぺマ・リンパが仏教精神文化の柱として非常に重要であり、各地の寺院や祭り、信仰[2] を築いた偉大な人物とされている。


 ブータン王国には寺院や仏教的な要所が全国に点在しており、その歴史や背景、各所にまつわる伝説は学びきれないほど奥が深い。


 今回、初めてこのブムタン県を訪れ、ブータン仏教の真髄を学ぶことができたように感じる。ブムタン県は中央~東部に位置しているため、これまでなかなか足を運びにくい地域であったが、今は国際空港のパロ県から空路で訪れることができるようになった。中央に川が流れ、山々に囲まれた美しい自然と、伝統的な建築様式で建てられた家々や寺々が広がる景色は、訪れる全ての人を魅了する。


 ブータン王国のイメージそのものの景色や、ブータン仏教に興味がある人には、ぜひ一度訪れてみてほしい。

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背景画像:「精霊の巌」彩蘭弥

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