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幸せのありかを探して 第15回

  • 川口真子
  • 1 日前
  • 読了時間: 4分

幸せの国と呼ばれたブータン王国の挑戦 その後

川口真子


 今回は、以前紹介したブータン王国最大の取り組みである経済特区『Gelephu Mindfulness City(ゲレフ マインドフルネス シティ)』(以下、GMC)の近況について紹介したい。


 GMCについては、この連載の第10回第11回の中で詳細を紹介しているので、ぜひ読んでみてほしい。


 GMCの構想が発表されてから、およそ2年が経とうとしている。この間、国王をはじめとする代表団は世界中を飛び回り、国外にいるブータン人だけでなく、世界中のリーダーにGMCの構想を紹介し続けている。そして、それに応えるように投資家や企業、あるいは各国代表団等が現地を視察に訪れ、メディア等でも紹介されているため、ブータン王国は今コロナウイルスのパンデミック後で最大の注目を集めているように感じる。


 日本でも、この1年の間に政治家をはじめ、有名人やYouTuberがブータンを訪れはじめ、私のところに問い合わせが来る機会も増えてきている。


 2023年の年末にGMC構想がブータン国内に発表され、2024年は上記の通り、国内外への周知がメインであったが、今年2025年はGMCの現場での開発が進められている。

 

 まず、一番初めに取りかかったのが、最も重要で、GMCの象徴の1つでもある、仏塔『Tashi Gomang Chorten(タシゴマン チョルテン)』の建立だ。ブータン王国でも、日本と同様に建設を始める前に、地鎮祭のような儀式が行われるが、このタシゴマン チョルテンの建立予定地では、ブータン王国の宗教的指導者であるJe Khenpo(ジェ・ケンポ)によって祈りが捧げられた。このことからも、このチョルテンがいかに重要な物であるかがよく分かる。


 ブータン王国内では、ブータン式、チベット式、ネパール式など、様々なタイプのチョルテンが見られるが、タシゴマン チョルテンは、インドのブッダガヤにある Dorjidhen Stupaから着想を得たデザインになると言われている。


 仏塔(チョルテン)は、瞑想や巡礼を行う場として考えられているが、ブータン国内では人々が祈りを捧げるために集まる、コミュニティーにとって大切な場でもある。そのため、このタシゴマン チョルテンもGMCにおいて、精神的だけでなく、文化的な中心地として、地元民と外国人訪問者を繋げる非常に重要な場になると考えられている。


(Gelephu Mindfulness City Facebookページより)     完成イメージ図 (Gelephu Mindfulness City Websiteより)


 この仏塔の建立と同様に、今年活発に進められていたのが、『GNBB(Gelephu Mindfulness City Nation Building Bond)』と『Mass volunteer program』である。


 これらは、国民が直接GMCに投資し、国家建設に貢献できる仕組みである。

 GNBBは、国内在住のブータン人がGMCのため新たに建設されるゲレフ国際空港を支援するための国内債券のシステムである。以前に、海外に在住するブータン人向けには行われていたが、今夏国内向けにも拡大された。将来、南アジア内での経済的、文化的、精神的な拠点を目指すGMCの玄関口であるゲレフ国際空港の建設を国民一人一人が担えるということで、数多くのブータン人が協力し、受付終了時2025年6月時点で、Nu.3億3千万(3億5千万円)以上が集まったと報道された。


 もちろん、協力したくても、金銭的に難しい人もいる。そういった人々がだれでも協力できるプログラムが『Mass volunteer program』である。7月8日に、いよいよゲレフ国際空港の建設開始が宣言され、この記念すべき日には、国王一家はもちろん、数千人のDe-suupやGyalsupのボランティア、コミュニティボランティアなどが集まり、大木や雑草取りなどのボランティア活動が行われた。


国王陛下家族も草刈りを行っていた           (Gelephu Mindfulness City Facebookページより)


 このボランティア活動は、今日までに3度行われており、毎回ボランティア参加希望者が増えており、これまでに1万人以上が参加したと言われている。先日10月初めに行われた際には、国王家族だけでなく、ご兄弟など多くの王族も参加され、国民と一緒に汗を流していた。


国王陛下のご兄弟も参加され、一緒に予定地を整備したり、ボランティアを労ったりしていた

(BBS Facebookページより)


 ブータン王国の国王は、代々、国民との対話を大切にしている。これは、私が初めてテレビでブータン王国を、前国王を見たときと全く同じである。

 このGMCの構想は、発表された当初、国内で賛否が分かれたが、今、このように国民の先頭に立って、ブータン王国の経済を支えようとする国王、そして、それを全力で支える王族の姿に感銘を受けて、このプロジェクトを何とか成功させようとする国民の姿は非常に美しく、また国が一丸となっている姿を見て、羨ましくも感じる。


 このGMCプロジェクトは、これからますます世界中で注目されると言われている。きっと、間違いなく日本でも話題になるだろう。今、オレンジのユニフォームを着て、国のために働きながら日本語を学んでいる私の学生たちは、将来この『GMC』を、胸を張って日本に伝えたいとワクワクしている。


 アジアの山奥にポツンと存在するブータン王国の今後の輝きに期待し、見守りたいと思っている。

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背景画像:「精霊の巌」彩蘭弥

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