鎌田東二
糞と言 ステージⅣの大腸がんが頭頂と側頭葉の間、および前頭葉の2ヶ所に転移していて、長い文章が書けないので、変則だが、断章を綴る。
1. AOパイプと糞と言
稲垣足穂は、ニンゲンをAOパイプ、すなわち、エイナス・アヌスanusからオーラルoral=口唇に至る円筒と見切った。秀逸な見立てであり、見切り、である。
そして、この両端の孔から排泄される物が、糞と言葉である。
スサノヲはすさび、荒ぶりの果てに大嘗殿に糞をまきちらして穢しに穢した。が、追放されたあと、八岐大蛇を退治して、「八雲立つ」の麗しき喜びの歌を歌った。
人体両端・上下南北から吐き出された糞と言が世界を動かし、変えた。
大腸(上行結腸癌)を50センチほど切った後、最重要課題は、きちんと排便ができるかどうか、であった。毎朝、排便を医師か看護師にチェックされた。その後自分でチェックするようになり、ちゃんとでていたら、合掌して便を拝み、写真に撮る。それがもう500枚近くたまった。500万円だと錬金術であるが、これだけだと錬糞術にすぎない。けれども、この錬糞術なくしては、わが身体は快調に作動しないのだ。
毎朝の錬糞術は健康のバロメーターであり、元気といのちのいぶきの表現・表出なのである。
これは、死活問題なのだ。
片や、歌としての言の発声、これも、いのちと世界を蘇らせる死活問題だった。
であれば、スサノヲのAOパイプは世界を破壊と混沌と救いに導くAOパイプであった日本史上最強・最重要のAOパイプであった。
2. 一遍上人のおしっことスサノヲぶり
先号で、一遍上人のスサノヲぶりに触れたが、その指摘を聞いた森正経三奈良神社宮司(愛媛県東温市下林)が13世紀末に出来た『天狗草子』の中に、一遍上人の出したおしっこを「万病に効く薬」と時宗信徒が先を争って有難く押し頂く様子が描かれていることを愛媛新聞2023年12月19日付けの記事に書いてくれた。この錬尿術は本邦最古のおしっこ療法である。
3. 結論
要するに、世界を造るのも、毀すのも、甦らせるのも、みな排泄物なのである。
であるから、そこから生まれむすぼれたわれらは、その神仏AOパイプの排泄物にうやうやしく手を合わせ、心から感謝しなければならないのである。そして、おのれの2種の排泄物についても、よくよく練りに練り、吟味入魂しなければならないのである。
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