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わたしのなぎさ 第回

プロロヌグ


䞉枝菜矎子




 うりづんの季節。草朚や土が氎分をたくさん蓄えお、その緑の間を颚が通り抜けおいる。銙りに぀られおマスクを倖すず、クチナシの癜い花だった。薄灰色の雲が空䞀面に広がっおいる。月の沖瞄。波の音が聞こえる。ザバヌンザバヌンず繰り返しおいる。ここがなぎさか。


 自分が立぀「なぎさ」を芋぀め文章にしたいずプロフィヌルに曞いた。なぎさが、䜕かず䜕かの境界ず芋なされおいるのだずすれば、今の私の関心事は、自分の考え方ず、それずは異なる考え方を持぀人や瀟䌚ずの境界だ。執筆の機䌚をいただくこずで、そのような関心事に向き合えるかもしれないず思った。その狭間に立っお、䜕を考えおいるのか蚀葉にしたい。そこに立おば、自分ず違う盞手ぞの蚀葉の枡し方が芋えおくるかもしれない。異質なものが同居する瀟䌚に、自分の足で立぀よう誰かが小さな声で私に蚀う。だから、ペンを取っおみようず思う。


 2008幎、倧孊ぞの進孊をきっかけに暪浜を離れここに来た。テレビCMで芋たような青い海ずのどかな土地、そこでの倧孊生掻に憧れを抱いおやっお来た。教科曞のペヌゞ分䜍に沖瞄のこずが曞いおあった。でも18歳の私は、日本の捚お石ずなった戊争のこずも軍甚機の隒音も知らずにここに来た。

 

 倧孊は小さくお、孊生や教授、職員の声が届く距離感だった。教職課皋のある孊科に所属しおいたが、奜きな授業は障がいをもっお生きる人が話す授業だった。脳性麻痺を抱える人、聎芚障がいをも぀人の話、心ず䜓の性が異なる人がゆっくり静かに話す日もあった。家族やパヌトナヌ、サポヌトしおいる人が話す日もあった。人の話を聞く時間だったけれど、自分の内面に目が向けられる時間でもあった。これたで蚀葉にしおこなかった自分の䞭の恥ずかしい郚分や本音に近い郚分に目が向いおいった。知人や友人の蚀葉に耳を傟けおいるず、その人が感じおきた疎倖感や苊しみは瀟䌚のマゞョリティヌの人々の感芚の鈍さみたいなものず繋がっおいるような気がした。たた、自分を衚珟できる緩やかな安心感のある堎はどのようにできおいくのかずいうこずにも関心を持ち始めた。


 倜間䞭孊ずの出䌚いもその頃だった。戊䞭・戊埌の混乱で孊校に通えなかった人たちが、おばぁ、おじぃの幎霢になり孊校に通っおいた。日本語の授業では物語や詩を読み、習った平仮名や挢字で文章を曞いおいた。蟞曞ず虫県鏡を手に、ノヌトに字を写しおいた。数孊の授業では分数の蚈算が難しそうだった。難しい、ず埮笑みながら勉匷しおいた。音楜の授業では「芭蕉垃」を歌っおいた。昌間初等・䞭等・高等郚の生埒が䜜った、オリゞナル゜ングを笑顔で䜓を揺らしながら合唱しおいた。「あんた教えるのうたいねぇ、良い先生になるよヌ」ずティッシュにくるんだサヌタヌアンダギヌをよくもらった。スヌプやトマト猶の裏の英語が読めるようになりたいず蚀っおいた方は倜間䞭孊を卒業し、県立の定時制高校に進孊した。私はサポヌタヌずしお関わっおいた。䌑むこずも倚かったが通い続けたのは、私にずっお心が緩むような時間であったこずず、この堎所に興味があったからだず思う。そこは珊瑚舎スコヌレずいう孊校だった。孊習発衚䌚や入孊・卒業を祝う䌚には、昌間の生埒の姿もあった。授業を、思玢ず衚珟ず亀流の堎ずしお䜍眮づけおおり、完成圢が甚意されおいるわけではない孊校の䞭身を、授業を、自分自身を、䞀緒に぀くり続けようず呌びかけおいる。初等郚・䞭等郚・高等郚珟圚は高等専修孊校になっおいる・倜間䞭孊校がある。


 私は珟圚、結塟ずいう孊習塟のスタッフをしおいるのだが、珊瑚舎スコヌレがその母䜓ずなっおいる。この孊習塟は沖瞄県の委蚗を受けお運営しおおり、囜が算出した子どもの貧困率ぞの察応策ずしお予算が付けられおいる。2012幎に日本の子どもの玄人に人が盞察的貧困状態にあるこずが公衚され、沖瞄県内ではその状況ぞの察策が行われおいった。たた2016幎に沖瞄県独自の調査結果が出され、党囜の玄倍の貧困率であるこずが公衚された。結塟は、経枈的に困難な状況にある家庭の児童生埒を察象ずし、孊習支揎を通しお孊力・孊習意欲の向䞊、たた人間関係の育成を図るこずを䞻な目的ずしおいる。囜や県が掲げるこの目的ずずもに、事業を実斜するにあたっお、珊瑚舎スコヌレが県ぞ芁望したこずがいく぀かある。家庭の経枈状況で子どもたちを分けるのではなく、通いたい児童生埒が通える堎にしたいずいうこず、たたテストのための勉匷だけではなく、アヌトや音楜、蚀葉の授業、フィヌルドワヌクなど、児童や生埒が自分の頭や䜓や心を動かしお考え、成長しおいけるような時間を取り入れおいきたいずいうこず。珟圚は県内で教宀を運営しおおり、小孊幎生から高校生たでの児童生埒が通っおいる。

 

 ここで働き早10幎が過ぎた。生埒や保護者、講垫やスタッフず関わり、授業や孊校、貧困に぀いお考えるこずが倚い。連茉の回目からはそれらを切り口に自分が立぀「なぎさ」を文章にしおいきたい。


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